記憶をホワイトボードで例える
頭の中の内部メモリ = 強制上書きされるホワイトボード
人の頭にはホワイトボードがある.何か考えたり思ったりするとボードに文字が自動的に書かれていく.ボードに書かれた文字はその場の記憶として頭の中に残る.ただ,ボードの大きさは無限ではなくスペースに制限がある.ボードの終わりまで文字が書かれるとどうなるのか? スペースを確保するためにボードの最初の方の文字が自動的に消されていく.そうすることで次々と物を考えることができる.でも,消されてしまうので記憶として残りにくい.
人によってボードの大きさが違う.多くのことを短期記憶できる人もいれば,あまり物覚えの良くない人もいる.また状況によってボードにかかれる文字の大きさが違う.冷静なときなら小さい文字でたくさんのことを書き込めるだろうし,逆にびっくりするようなことがあれば大きな文字でボードが埋まってしまい,何も考えられなくなる(頭の中が真っ白な状態).
書き残すことは,外部メモリに思考を保存すること
何かまとまったことを考えたいとき,頭の中だけで全てを終わらせるのは難しい.ボードの強制上書きにより,思考の全て記憶しておくことが難しいからだ.では考えたことを失わないようにするにはどうするのか? 紙などに書きましょう,アウトプットしましょう.内部メモリが強制上書き保存されてしまうのだから,外部メモリに保存するしかない.
中学生や高校生の指導に適用
大学・大学院時代に塾講師・家庭教師のバイトをしていた.中学生・高校生の先生をやっていたことが多かったのだが,数学が苦手な子に途中計算の大切さを伝えたいときがあった.面倒だ,紙がもったいない,と途中計算を書く事のデメリットを主張して手を動かそうとしない.そういう生徒達に,途中計算のメリットを説明するのにホワイトボードを引き合いに出した.全員を納得させることはできなかったけど,ある程度の生徒は理解してくれていた.「途中計算を書かないということは自分の中のボードの大きさに自信があるんだよね〜」という脅しも使いやすかったし.
自省と心がけ
これって論文執筆時の自分にも当てはめられるんだな.何をやろうとしているのか,何を伝えるための論文なのかをどこかに明記しておかないと,文章執筆を続けていくうちに論文の方向性を見失う.人に教えていたくせに自分でもできていなかった.文字として外部に残しておくこと.