モチベーション上昇を促す指導

 後輩の論文や研究計画立案の面倒を見る機会が増えてきた.指導する機会を得て思うことは,どういった方法で接すれば効果の高い指導ができるのだろう,ということだ.ここでいう「効果の高い指導」とは,指導に対して相手が,素早く,こちらの想定通り(もしくは想定以上の)アウトプットを生み出すことを意味する.例えば,設定した〆切通りに図・文章を作ってきたり,指示した作業量を〆切よりも3日早く終わらせたりすることだ.どうせやるなら高い効果を得たい.
 これまでに自分の研究テーマに直接的に関わる後輩と3名接してきたが,それは,なかなかに難しい.「こうしよう」「こうしたい」「こうしてもらおう」「こうしてもらいたい」というおぼろげなビジョンはあったのだが,しっかりとそれを伝えることができていなかった.私自身としては,全部を命令して作業させることがあまり好きではないので,相手からの自発的な作業が出てくるようにしたい.相手の中で,作業に対するモチベーションが上がれば自発的行動が増える気がする.
 そこで,モチベーション上昇を促すには,どんなことが必要だったのかな,ということを反省してみた.以下に,思いあたったことを3点挙げてみる.

1.なんでそれが必要なのかを説明する
 何のためにそれをやる必要があるのか,を説明する.意味も知らされずに「とりあえずそれやって」と言われての作業は,義務感・お仕着せ感に背中を押されての作業になるので,効率が悪い.同じ作業をやるにしても「とりあえずやらなくちゃいけないんだよな〜」よりは,「これをやれば○○につながる」と作業の位置づけを理解した方が良いに決まってる.少しでもいいから自発的に作業する状況を作れると,やっている本人も(多少なりとも)楽しいし,モチベーションが上昇するから仕事の効率も良い.
 やるべき作業の意味づけをして,やりがいを持たせる.それがないとどんなことが困るのか,それをやることでどんな幸せなことがあるのか,が示されると更に楽しくなる.
2.ゴールを明確にする
 何を知ることを目的として研究を行うのか,何を言いたくて論文を書くのか,を始めに示す or 皆で確認する.そうすると,今やっている作業が何に繋がるのかが見えてきやすい.指導を通して生み出された計画や指示された作業が,どういう位置づけにあるものなのかを把握させることが出来る.作業中に迷子になることが少なくなる.
 当然,論文執筆や観測・実験を続けていくことで始めに目指していたゴールとは別のゴールに向かうことになってしまう事態もあるだろうけど,そのときにも「始めは○○を目指していた.でも進めていくうちにこういう状況になった.だから軌道修正して■■を目指すことにしよう」と論理的に説明できる.
3.作業をやってきたらきちんと褒め,次なる指示を速やかに与える
 「やってきて当然だろう」と思うのは自分側の驕りである.作業をやったという事実を認めてもらいたい.特に作業を自発的にやったときはなおさらだ.褒められれば次の作業に対するモチベーションが上がる.褒め方って難しいけど.
 そして相手の気持ちが乗っているうちに,次の指示を与えられるようにする.指示 → 作業 → 褒める → モチベーション上昇 → 次なる指示,という良い回りが出来始めると良い.


 現在,3名の後輩と共に論文執筆&共同研究を行っている.以上の3点に注意しながら,指導に当たってみよう.



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