博士課程における授業料の意味

きっかけの記事


 昔上司だったSEに、「仕事は信頼を貯める様意識すると上手くいく」と言われた。それからしばらく、ぼやっと考えながら仕事をしてきた。投資における通貨は円だったりドルだったりする。仕事における通貨は信頼度である。
 研究者生活に置き換えて,信頼度について考えてみる.

下積み=院生時代
 リンク先の文章の中で,一番惹かれた部分.

 仕事の種類にもよるんだろうが、私が思うに、下積み時期の重要さは「元手を貯める時期」だという点にある。下積みというのはある種の無敵モード、多少の失敗では信頼を根こそぎ失ったりはしないという、長い仕事生活の中でも唯一の時期である。この時期に、投資テクニック(仕事におけるスキル)を身に付けるのと同時にせっせと信頼度を貯めておくと、後から色々と見返りがある。

 そうだなーと納得.特に「下積みというのはある種の無敵モード」という部分に共感.学生・院生である間は,多少なりとも「研究室」「研究室の先生」を盾に取ることができるから,外部発表において失敗しても損がない.逆に,盾に隠れてしまって自分のアイデンティティを認識させづらい(「ああ,○○先生のとこの研究だね」と言われて,「私の」研究ですと言いづらい).盾を利用しながら,自分自身・自分の研究を外野に売り込んでいけばよいのかな.

 博士進学を決めた方や博士在学中の方,博士論文作成・投稿論文執筆・実験・解析などにそれぞれに現在が忙しいであろうが,現在の自分の居場所以外にも意識を向けておいた方が良い.博士課程在学において博士を取ることが目標となりがちだが,博士取得は研究者生活のスタートでしかない.取得後は急に後ろ盾がなくなり,急に就職難の研究社会に放り出される.あとから嘆いても遅い.自分の現在の所属から就職先が見つかることが確定していれば,それは楽で良いけれど.

 研究職に完全公募制が敷かれつつはあるが,同じ能力を持った人で知らない人と知っている人がいたときに,少しでも知っていて更に信頼も得られていれば採用される確率は上がるだろう.あと,どう考えてもある特定の人を雇うための公募だろう,という出来レースもあることから,いろいろな場面で自分の知名度・信頼度を上げておいて,必要とされる自分を作り出しておくのは得なはず.

 授業がないのに博士課程で授業料を支払う必要があるが,この「後ろ盾」のために支払っているのかも.だとすればローリスクで投資のできる機会を利用しないともったいない.

元手をためるフィールド
 主に3つ.

  1. 学会
    • 学会にて研究成果を発表する.まずはアウトプットしなければ元手も得られない.そして,ただ発表するだけではなくて,自分の気になる研究や,自分が参考にしたい研究者に会いに行って,積極的に話をする.覚えてもらえなくて元々なんだから,顔を覚えてもらえればしめたもの.
  2. 論文
    • 論文を書く.書かなければ目に留まらない.書いたとしても目に留まらないかもしれないが,自らメールなり郵送なりで論文を送りつければよい.見てもらえないかもしれないけれど,ただ待つよりは可能性が上がるだろう.
  3. 研究室に飛び込む
    • 学会や論文掲載を待つのではなくて,自らコンタクトを取って会いに行ってみる.積極的な姿勢を持って接すれば(薄っぺらすぎると逆に悪印象だけど),信頼を得るための土台が作られる.

 まあ,あまりに見返りを求めすぎて作為的に行動すると,逆に信頼感を損ねるかもしれないけどね.