研究能力は質疑応答で磨かれる

記事紹介
 卒業研究で配属されてきた4年生はほとんどの場合以下の段階を経て研究に対する能力を発達させていく

  • 第1段階:ゼミでの発表や研究室内での議論で、自分の主張を否定するような意見に出会うと「怒る」あるいは「泣き出す」、「へこむ」
  • 第2段階:ゼミでの発表や研究室内での議論で、自分の主張を否定するような意見に出会っても、何とか受け入れられるようになる
  • 第3段階:他人の発表や議論を聞いて比較的細かい「よくないところ」を指摘できるようになる
  • 第4段階:他人の発表や議論を聞いて、発表や発言の枠内で「よくないところ」を指摘できるようになる。ただし、改善方法は提示できない
  • 第5段階:他人の発表や議論を聞いて、発表や発言の枠内で「よくないところ」を指摘できるようになる。しかも、改善案も提示できる
  • 第6段階:他人の発表や議論を聞いて、研究テーマや扱っている問題の本質的なポイントから「よくないところ」を指摘できるようになる。しかも、改善案も提示できる.

 確かに自分もこういうステップを踏んできた.こういう風にまとめられると意識できる.面白い.

第3段階へのステップが難しい
 第2段階までは受動的であり,自動的にその機会が訪れる.ゼミが通常に執り行われ,教官の学生指導が不十分でなければ卒論作成時に既に多くの人が経験できるだろう.
 第3段階に進むには自分で質問をできるようにならねばならない.ここは少し難しい.学生が質問できる環境がゼミで整えられているかがキーとなる.先生だけが意見を言うようなゼミ空間だと学生からの指摘は生まれにくい.「どうせ先生が言いたいことを言うだけでしょう」という空気が流れる.特に学生と年が離れている教官が言いたいことをすぐに言うのは良くない.ちょっと目標にしたい研究者の先輩や同輩が質問している姿を見て「自分もああいう建設的な質問ができるようになりたい」と感じるものではなかろうか.
 学生の方で勝手に育ってくれ,というのは簡単だが,教官の方から育つ素地を与えてあげるのは悪いことではないはずだ.研究能力を高めたことで,その学生の卒論・修論が想定以上の内容に化けるかも.

質問ができるようになると
 「ここを質問しよう」という視点を持つと「ここが質問される」という想定ができるようになる.「よくないところ」がどこにあるのか,自分の研究を俯瞰できるようになる.質疑応答を繰り返すことでスキルが上昇していく.だからこそ質問の機会・質問させる機会をゼミで作ればよいのだ.その方法の一例を以前のエントリで記述した.
 発表 → 質問 → 議論 → 先生から見た総括,というスタイルを提案.質問は学年の若い順に.若い学年の質問があるうちは,上の学年は質問を我慢する(言いたいことがあっても!).そして,質疑応答も含めたゼミ発表時間に,60分とかの制限時間を設ける.

第6段階でありたい
 研究者としてのスタート地点と元記事で書かれていたけど,確かにその通りですよね.学生時,ゼミで建設的な質問・コメントができる先輩がとてもカッコよかった.ポスドクになってから,そう見られる自分でありたいと思い,意識的に発表を聞くようになった.まだまだ理想には遠いけれど,昔よりは俯瞰的にほかの研究を見れるようになったし,しょうもないコメントも減らせているはず.
 何事も経験.自分の成長につながる.第6段階からの発達を目指して,質問・議論に顔を突っ込んでいきたい.
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